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*9が指定したカプ・シチュに*0が萌える⇒恋わずらい

69 名前:風と木の名無しさん[sage] 投稿日:2013/11/26(火) 14:23:42.31 ID:M/MyQEUe0

恋わずらい

70 名前:風と木の名無しさん[sage] 投稿日:2013/11/27(水) 00:29:52.29 ID:DsqM9MrK0

カミルの手は気がつけば、用紙の端に彼の名前を記していた。
フランツェ。フランツェ・ロップ。
その文字の上を指先でなぞると、まだ乾いていなかったインクが紙の上に擦れ、ぐちゃりと汚れる。
黒くなった人差し指に、こっそりと唇を寄せた。彼の名前の欠片だと思うだけで、愛しかった。
「フランツェ」
声に出して音を辿る。子音と母音の一つ一つを、確かめるように舌で弾くと、それだけで胸が締め付けられた。
フランツェ、ともう一度呟いて、カミルは机に突っ伏した。心臓と肺が痛かった。

きっかけがなんだったのか、カミルにはもう思い出せない。
その感情はいつの間にか心に居座って、その面積を瞬く間に広げていった。
彼の目が熱っぽく、自分を見ている気がする。彼の声に、愛しげに呼ばれた気がする。
彼の声が聞こえる度に、耳を澄まして聴いてしまう。
休憩時間の廊下で、寮の食堂で、彼の姿を求めて目を彷徨わせる自分がいる。
今まで一心に聞いていた授業の先生の声さえ、ふとした瞬間に真後ろに座る彼の気配を感じると、もう駄目だった。
気もそぞろになり、頭の中が彼で埋め尽くされていく。
彼がどんな表情をしているのか、その視界にカミルは入っているのか、どう思っているのか。そんなことばかりが気になっていく。
そのせいで、今日は敬愛すべきモーリッツ先生を、酷く怒らせてしまった。
自分を馬鹿な奴だと思い、酷く申し訳なく思っているのに、命じられた反省文の文字は一向に進まない。

伏したまま、額を引っかく。その時背中に遠慮がちな手が触れて、カミルは飛び上がらんばかりに驚いた。
「カミル。大丈夫?」
名を呼ぶ声の響きに、どうしようもなく心臓を揺さぶられ、動揺する。
いつの間にか背後に立っていたフランツェの姿に、硬直して返事をしないカミルをどう見たのか、フランツェはますます心配そうな顔をした。
「やっぱり具合が悪いんだよ。そんな顔をしているもの」
「いや……気のせいだと思うよ」
なんとかそう返したフランツェの頬に、ほっそりとした少年の指が爪先で触れる。
その僅かな接触のくすぐったさに、カミルは目を伏せた。

71 名前:2/3(入れ忘れそして分割ミス)[sage] 投稿日:2013/11/27(水) 00:31:48.95 ID:DsqM9MrK0

伏したまま、額を引っかく。その時背中に遠慮がちな手が触れて、カミルは飛び上がらんばかりに驚いた。
「カミル。大丈夫?」
名を呼ぶ声の響きに、どうしようもなく心臓を揺さぶられ、動揺する。
いつの間にか背後に立っていたフランツェの姿に、硬直して返事をしないカミルをどう見たのか、フランツェはますます心配そうな顔をした。
「やっぱり具合が悪いんだよ。そんな顔をしているもの」
「いや……気のせいだと思うよ」
なんとかそう返したフランツェの頬に、ほっそりとした少年の指が爪先で触れる。
その僅かな接触のくすぐったさに、カミルは目を伏せた。
「鏡を見てご覧。大体、カミルが作文を進められないなんて、それだけで変だよ」
それに居眠りをするなんて、とフランツェは付け加える。
確かにこれまで、カミルは模範的な生徒だった。近頃様子がおかしいと言われていることも知っている。
その内では同性への恋情に惑わされているというのに、純粋な心配を寄せてくれる彼に、尚思いが募った。
「部屋に戻って休んだら。先生にはぼくから言っておくよ。そしたらきっと先生も、厳しくは言わないから」
「平気だから。僕が悪いんだ。ちょっと考え事を……していたから」
「なら何か、悩みがあるんじゃない。ぼくにできることがあったら」
「君に話せるような事じゃないよ。余計なお世話だ」
強い語調で言い切って、カミルは頬に触れる指先を払った。
そうでもしなければ、今にでも、想いを吐き出してしまいそうで怖かった。
傷ついたような目を見ていられなくて、作文の用紙へ無理に目を向ける。ごめんね、と謝る声は切なげで、罪悪感と、今すぐにでも抱きしめて詫びたい衝動とで、また胸が潰れるように痛んだ。
カミル、とまた彼が名前を呼ぶ。耳を塞ぎたくて、堪らなかった。

72 名前:3/3[sage] 投稿日:2013/11/27(水) 00:32:36.32 ID:DsqM9MrK0

「ごめんなさい。こんなに君を見てるのに、ずっと見ていたのに、ぼくには何も分からない、何もしてあげられない――」

思い詰めた声色で紡がれた、その言葉の意味を知る前に、カミルの頬に柔らかなものが触れた。
はっとして伸ばした手は宙を掻いて、彼の後姿は逃げるように教室を出て行く。
追って、すぐにでもその真意を問い質さなくてはと思うのに、頭と身体のどこかが麻痺した様になって、一歩も動けなかった。
――彼の目が、自分を見ている気がした。彼の声に、愛しげに呼ばれた気がした。
気のせいではなかったのか。恋の病は伝染するのだろうか。
それはどちらからどちらに、移ったのだろうか。

呆然としながら、カミルの手はいつまでも、フランツェの唇が触れた痕を押さえ続けていた。
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